目次
テレビ番組制作についてーネタ(企画)の決め方
生田:今日はテレビ番組の話をしていただきます。酒井さん簡単に自己紹介をお願いします。
酒井: 2011年入社でテレビ番組のディレクターを担当しています。
生田:酒井さんも担当されたカンブリア宮殿がこの前6月20日にオンエアされましたけど、番組はどうやって作られているのか、我々企画のことをネタって呼んでますけどどうやって決まっていくのですか?
中村:社会の潮流とか話題性などを鑑みて、何かしら関連した企業をまずはピックアップします。その企業のサービス、販売商品などを紹介する番組ではただの企業紹介番組になってしまうため、裏側でどんな経営努力がなされているのか?商品が生み出されるまでにどんなストーリーがあるのか?を徹底的に調べ上げます。取材して世の中の人に知ってもらう価値があるなと思ったら、プロデューサー、ディレクターがお互いにネタを出し合い、こういう観点のリサーチも入れてみた方がいいのでは?などとお互い意見を出し合って「この流れ・立て付けで1時間番組を作りたいです」とテレビ局側にプレゼンをしに行く感じですね。
プレゼンでは、番組のポイントをかいつまんで「こんな立て付けの1時間にします!」という1〜2枚の企画書にして持っていくことが多いです。これは番組制作各社の独自スタイルがあると思います。逆に言うと10枚ぐらいにもうガチガチに固めた企画書を持っていって「これで絶対できます!」というすごい熱量で攻めていく番組制作会社もあれば、僕たちみたいにいくつか取り上げたい企業3社ぐらいを同時に提案しに行くというパターンもありますし、それぞれの番組制作会社のやり方があると思います。
生田:ネタを出したり探したりっていうのはプロデューサーが多いのですか。それとも ディレクターが多いのですか。
酒井:まちまちじゃないですかね。
中村:例えば、今プロデューサーという立場で仕事してますけど、僕ばかりが発信者になっていたら、結局ディレクターは受け身になってもうちょっとこういう企業やりたいのになという思いがあるかもしれないですし。「君らしいネタだね」とかって思う時もあります。プロデューサーもディレクターも全然関係ないです。誰が言おうと面白ければそれは良いと思います。
動画制作に関するご相談はこちらテレビ番組制作の舞台裏ー企業への出演交渉について
生田:企画の候補になっている企業への連絡方法は?
中村:まずはお電話でアポを取ります。企画の段階であり、テレビ局にも話をしていない、企画書も書けていないタイミングなので、きちんと「未定」であることをお伝えしても「カンブリア宮殿の制作を担当してる」と名乗るだけで、やっぱり先方からすれば「カンブリア宮殿から取材の依頼が来た!」と間違った解釈をされるケースがあります。
生田:企業もやっぱりテレビ出演は嬉しいのですかね。
中村:そうですね。企業によっては「半年前ぐらいに別の制作会社さんから連絡が来ました。成立しませんでしたけど。今度は成立させてくれるんですよね?」とプレッシャーがかかることも(笑)
生田:なぜピー・ディー・ネットワークに決まったのですか?
中村:企業にとって大きなエポックメイキング的なことがタイミングよく起こったり、下調べの段階ですごい面白い記事を見つけてそれを直接引き出せたりとか。その逆もあり、僕たちでは取材許可がおりなかった企業でも別の制作会社で1ヶ月後ぐらいに問い合わせしたら成立していたり。僕らの取材力が足りず悔しいっていうことです。
生田:他の番組制作の企画の場合はどうですか?
酒井:グルメ企画のコーナーを担当していた際は、いわゆる足で稼ぐこともあります。「すごい行列できてる、この店なんだろう?」と実際立ち寄って並んで食べて…(笑)それが番組になったこともあります。
テレビ番組制作の舞台裏ー企画の調べ方
生田:足で稼ぐ以外で、ネタの調べ方を教えてください。
酒井:やっぱり意識してるのは一時情報はあくまで雑誌記事やネット情報ですが、そこから先を広げていく。電話で話を聞いたり、直接会ってお話を聞いたり、自分なりにここが面白いと思うポイントを提案しています。
生田:「よし今からネタを探そう!」と立ち読みしたり?
酒井:そういうパターンもありますし、普段からアンテナを張ってるイメージです。
中村:最近はSNS、ハッシュタグ のランキングも見ますが、昔からずっとやってるのは本屋に行くことです。本屋に行ってとりあえず経済誌とか雑誌の見出しにある明らかに目立つ文言だけをスマートフォンとかにメモしていって、今世の中で人に響いてる文字要素を集めています。新聞、雑誌はやっぱり情報が早い。1ヶ月前に見たキーワードがもう1ヶ月後にはこういうキーワードになっている。例えば「古着」は「リユース」という言葉に変わって今のZ世代にはすごい響いているんだなと感じたり。逆にテレビ番組はしっかり作り込みます。作り込む時間がかかるのでスピード感に少し課題がある。視聴者層を60代・70代と想定した場合、そういう人たちにも響くかな?と色々考えます。
生田:普段から流行に敏感であるべきでしょうか。
中村:そうですね、番組制作や企業ブランディングは世の中の潮流と真逆のことやっても世の中の人に響かないですよね。番組や企業に対していいなと思ってファンになってもらうためにも、トレンドには敏感になっておかないと絶対ダメだと思っています。
テレビ番組制作が決まった後の段取りや進行について
生田:ネタが 決まって企画が採用されてから、オンエアされるまでどれぐらい時間がかかるのでしょうか?
酒井:半年かけて作る番組もあれば、1〜2ヶ月で作ってください!ということも。もちろん時間がないからといってクオリティを落とさず、そこは頑張るしかありません。
中村:時間がない場合の解決方法としては、人数と取材に行く回数の密度を増やすしかないです。急に「ここの収録のネタがすぽっと空いたんです、ピー・ディー・ ネットワークさん何かありませんか?」とテレビ局から依頼がくることもあります。
生田:番組企画がテレビ局に採用されてテレビにオンエア(放送)されるまではどのような流れになるのですか?
酒井:まずは情報収集のための「ペン取材」からですね。例えば企業の代表の方からカメラを回さずにお話を聞く。そして取り上げたら面白そうなお話が出てきたら、代表よりも詳しく知ってるような現場の社員の方に会いに行ってさらにまたペン取材する、という繰り返しです。そこからやっと聞いてきた内容を台本化するために、どこの話をどういう順番で見せていったらより分かりやすいか、より面白いかをテレビ局も含めて打ち合わせを重ねます。台本が出来上がって初めてカメラを回すことになりますね。
生田:カメラを回すまで平均するとどれぐらい時間がかかりますか。
酒井:そうですね、ヒアリングしながらカメラを回すような同時並行でやってくパターンもあるので。
中村:長い時は本当に準備や取材だけで1〜2ヶ月は平気でかかってしまいます。
酒井:そうですね。今回も6月の放送ですけども1月ぐらいから提案はありましたよね。
中村:今回に関しては僕が1番最初に企業に会いに行ったのですが、スケジュールを見返したらそれが去年の12月でした。もう半年ですよ。それでいざカメラを回し始めたのって年が明けた4月の新入社員歓迎会とかのときだから、3〜4ヶ月ぐらい取材したということです。
生田:今回で言うとどれぐらい取材に行ったのですか?
中村:酒井君と一緒にやってるディレクターが別に2人いたのでその人とかを合わせると40回近くいっています。
生田:結構色んなとこ取っていましたもんね。
酒井:そうですね。使われてないところも結構色々撮ったりしてるので。飛行機に乗ったりとかフライトシミュレーターみたいなカッコイイ機械を見せていただいたりとか。
テレビ番組制作ー放送を終えて
生田:カンブリア宮殿の制作・放送を終えていかがですか?
中村:静岡の鈴与グループという本当に幅広い事業をやってる企業を取材したのですが、やはりテーマを作るのが難しかったです。今回紹介させてもらった飛行機の航空機の事業か、それとも運輸の要である陸上の配送事業なのか。結局我々としてはどこかの事業を主役にするのではなく、鈴与グループの考え方というものを1つのテーマにして取材し、1本の軸にした。その企業の根幹となる部分をテーマにするっていうのは正しいやり方の1つなのかなというのは思いました。
ーーーー【後編】に続きます!
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