CROSS INTERVIEW02

苗村佳美ディレクター / 取材歴:5年坂本透ディレクター / 取材歴:15年

採用面接からの付き合いだというディレクター苗村と坂本。入社から5年を迎える苗村は今壁にぶつかっていると言います。悩める若手にベテランディレクター坂本はどんなアドバイスをするのか二人のインタビューをご覧ください。

  • 苗村佳美苗村佳美BSテレビ東京「日経プラス10」、BS朝日「ザ・ドキュメンタリー」など、経済番組、ドキュメンタリー番組で経験を重ねる若手ディレクター / 取材歴:5年
  • 坂本透坂本透日本テレビ「A」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」など、ドキュメンタリーからバラエティー番組まで幅広く手掛けるディレクター / 取材歴:15年
CROSS INTERVIEWSIDE : A

語り手

苗村佳美

ディレクター

聞き手

坂本透

取材歴:15年

取材というのはするものであって、
誰かにさせてもらうものではない。

ロケを怖がるテレビディレクターがいてもいいですか?

苗村が入社して丸5年? あっという間だなあ。面接で覚えてるのは「映画浴」のことだけだけど。

苗村

まだ言いますか! お恥ずかしい話、趣味の欄に書くことがなくって「映画鑑賞」じゃ面白くないし、まあまあ映画はそれなりに見に行ってる方だから「よし、浴びちゃおう!」と(笑)。話が盛り上がったから、私としてはつかみはOKだったんですけど。

6年目に入ってどう? 思い描く“ディレクター像”みたいなものは見えてきた?

苗村

仕事の流れもわかって、番組づくりの奥深さを毎日最前線で味わっているんですけど、この仕事のどういうところを面白がればいいのか見えなくなっちゃって……。端的にいうと、ロケが怖いんです。ディレクターらしからぬ言葉でホント申し訳ないですが(笑)。
この絵面いる?いらない?の判断をその場でしなきゃいけないわけじゃないですか。もちろん多めに撮って、後から切ってなんてこともできますけど、それは取材対象者にとっての手間になったりすることもあるし、後々の私の作業的なロスにもなりますし。

誰にでも悩める時期はあるけど、特にADからディレクターになるときとか、そこからさらにプロデューサーへの転換期は如実にあるよね。

苗村

いま担当している番組の中で東レの新技術を紹介するんです。繊維技術がいかに日本社会を支えてきて、生活にどう関わっているか。炭素繊維、ナノファイバー、先端技術……そんなテーマを紹介するんですが、繊維の断面図や当時の研究風景といった先方からの提供資料をどこまで出してもらえるか不安で。
徹底して事前に確認するつもりではいるんですけど、企業からのもらい映像や資料って広報的な要素があるので、先方に都合がいいことしか出てこないこともあるじゃないですか。

取材はさ、するものであって、させてもらうものではないんじゃないかな。もちろん礼を失してまでやるものではないから、させていただくことはもちろんあるけれど、取材は番組づくりをする側がするものだと思うよ。

苗村

なるほど……。明確にしっかりと「こういう映像が撮りたいから、無理ですか」とか「こういうのってないですか」って言うってことですね。思わず企業を“さん付け”で呼んじゃうことありますもんね。「A社さんがこう言ってるので……」みたいな(笑)。その時点で撮りたい画が私から離れちゃってますね。気をつけます!

たくさんの人が前向きになる”きっかけ”になればうれしい

最近テレビ見てる?番組を作ってる以上はちゃんと意識して見ないとね。

苗村

本当に耳が痛いところ……。こだわりすぎるのはよくないと思いますけど、やっぱりテレビには“パターン”があると思ってて。その引き出しを増やしながら、視聴者が求めるスタンダードを知るにはテレビをちゃんとチェックしないといけませんよね。
お茶の間に流れてる番組を見て、きっとこの画面をつくるのに企業の担当者がいて、現場に話を通してもらってこの絵面ができあがって……。でも私だったらナレーション差し込んでから手元の寄り絵から入るかな、とか想像できれば楽しいですよねきっと。

どこか他人事として仕事に向き合うようになっちゃったのかもしれないね。全部“自分ごと”に置き換えて考えればぐっと肩の荷が下りるはずだよ。

苗村

私、いつか人を元気づけられる番組をやりたいんです。善意の押し売りをするわけでなくて、何かこれまでと違う考え方を私の番組で気づくことができたとか、新しい挑戦をする気になったとか、その人が何か変わるきっかけになれば本当にうれしいです。
普段行けないところにカメラを抱えて入っていけるところがこの仕事の魅力だと思ってます。だからこそ、自分が持っていくカメラで何が撮れるかを常に想定しておけってことですよね。引き出しの数と大きさが大事だってことがわかりました。ありがとうございます!

CROSS INTERVIEWSIDE : B

聞き手

苗村佳美

取材歴:5年

語り手

坂本透

プロデューサー

編集で悩むってことは、現場で悩んでないから。現場で悩むってことは、準備が足りてないから。

難しい話はその道のプロに。
交通整理をするのが俺たちの仕事

坂本さんは一回その画を見たら、どんな現場だったとか、こうやって作ってるとかってわかりますか。

坂本

わかるね。

もしその“枠”から外れた番組や画作りを目の当たりにしたら、どうです?

坂本

くやしいね。ホントくやしい。最近だと『チコちゃんに叱られる!』(NHK)なんてホントずるいね。素朴な疑問を解決する番組なんて、何十年も前からあるわけじゃん。そこに5歳の女の子が大人たちの知ったかぶりをぶった切って、正しい知識を教えてくれるわけ。それはやっぱり発明だよな。おれたちも、これまでになかった新しいモノを生み出さなきゃ、って思うよね。

結局「取材力」ってどういうものなんでしょう。私は“その人”の要素をできるだけ見つけること、だと思ってて。たとえ怒らせたとしても、その人自身さえ気づいていないようなその人の内面を引き出すことが取材力なんじゃないか、と。

坂本

そうだね。それってすごく大切な考え方だと思う。俺はなんだろうな、距離を詰めるってことかな。経済番組をやってるとさ、大学教授や専門家の先生やら、いわゆる大御所たちがいっぱいいるわけ。でも視聴者のことを考えたらできるだけ平易な表現を使ってほしいんだけど、普段まわりを専門家に囲まれている人はそのあたりの対応ができない人もいるんだなあ。

おもいっきり“誰か”を思い浮かべてませんか?(笑)当番組も後から共有することが多くて勉強になることが多いです。うちの会社って人を育てる意識が強いと思いません?

坂本

「リセッション」って言われて何人が「経済停滞のことですね」って言えると思う? もちろん時間をかければ調べることもできるし、ほしい情報をほしい熱量でもらえるけれど、テレビだと時間をかけること自体が難しい。生放送ならなおさらだよね。そこで時間をかけずに、こちらの意図をしっかり伝えて、人に動いてもらう。そういった距離の詰め方が取材力なのかな。

結局、経済番組で視聴者が知りたいことって、結局景気はよくなるの?悪くなるの?ってことですもんね。

坂本

シンプルに考えた方がいいんだよ。難しく考えるのはその道の方々にお願いをして、俺たちは思考の渋滞が起きないように交通整理をするだけなんだからさ。

何年経っても取材前は不安。だからこそ、やりがいを感じる

じゃあ一番やりがいを感じる瞬間は?

坂本

取材がうまくいったときだね。

えっ。番組ができたときじゃないんですか。

坂本

もちろんそういう人もいるし、編集命!のディレクターもいるけど、おれは取材第一だね。取材前ってやっぱり不安なわけ。それをうまく乗り越えてきたからこそ、やりがいを感じる。

坂本さんも不安なんですね……。

坂本

もちろん! ただ不安がっててもしょうがないから、できるだけもがくんだよ。AD時代にオフライン室で編集中に悩んでたディレクターさんがいて、それを見て他の先輩が「編集で悩んでるってことは現場で悩んでないってことだよな」ってね。
言われた方も「ああ、ホントそうだなあ」って。さらには現場で悩んでるってことは準備が足りてないってことなんだよ。全部つながってるの。俺も苗村も悩みはつきないだろうけどさ、仕事と真剣に向き合ってるからこそじゃない? その向こうの景色について、また語れる日を楽しみにしてるよ!

Creator’s Profile

苗村佳美Yoshimi Naemura

2013年ピー・ディー・ネットワーク入社。「ザ・ドキュメンタリー~がん治療最前線~」ではノート5冊分の入念な取材をするなど綿密な取材を心がけている。趣味は映画浴。

これまでに手掛けた番組・企画

日経プラス10

ハイスクールQ

ザ・ドキュメンタリー

など

坂本透Toru Sakamoto

オフィス・トゥー・ワンを経て2010年ピー・ディー・ネットワーク入社。バラエティーからドキュメンタリーまで幅広いジャンルの番組制作に関わる。視聴者にわかりやすい番組づくりに定評がある。

これまでに手掛けた番組・企画

ビートたけしのTVタックル

所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!

日経プラス10

など