プロジェクト概要

『日経スペシャル カンブリア宮殿 ~村上龍の経済トークライブ~』(テレビ東京)

ニュースからは伝わってこない日本経済を、村上龍さん・小池栄子さんが“平成カンブリア紀の経済人”を迎えてお送りする大人のためのトーク・ライブ・ショー、それが『カンブリア宮殿』です。
番組自体は企業や学校、NPOの活動を取材・紹介する「VTR部分」と、企業経営者や財界人の方々を迎えて村上さん、小池さんがクロストークする「スタジオ部分」で構成されています。『カンブリア宮殿』の番組制作に関わる制作会社は担当が順番に回ってくるわけではなく、各社が企画をテレビ東京に提案してラインナップが決まります。つまり制作会社が企画を考えて提案するというアクションを起こさない限り、制作に関わることはできません。

ピー・ディー・ネットワークでは2013年から『カンブリア宮殿』の制作に関わっています。今回はこれまで制作してきた中でも特に印象的だった2014年4月17日放送分の老舗肌着メーカー「グンゼ」の事例をご紹介します。

プロジェクト名テレビ東京|カンブリア宮殿
取材対象グンゼ株式会社
PDN担当者中村篤史(Producer)
取材前の印象男性用下着や女性用ストッキングのメーカー

取材前の印象

歴史ある肌着メーカー

取材先の企業を決めることから番組づくりがスタートしますが、企業と一口に言ってもその数は膨大にあります。そこで「いま、どのような企業を、どういった切り口で取材すれば視聴者に“刺さる”番組になるのか」を意識しながら、主人公となる企業を探していきます。
企業選びのポイントは「歴史があること」、そして「規模が大きすぎないこと」です。創業から年月が経っても、この時代まで独自の取り組みを続けている会社には魅力がありますし、あまりに巨大な人数・売上を誇る会社を取り上げてしまうと焦点がぼやけてしまうことから、この2つを心に留めるようにしています。

カンブリア宮殿の担当プロデューサー 中村篤史
カンブリア宮殿の担当プロデューサー 中村篤史

上記2つのポイントを満たす企業をいろいろと思い浮かべていたのですが、グンゼもそのひとつでした。昔から男性用の肌着メーカーとしてグンゼを知っていたので歴史は古そうだと思っていました。また、肌着の印象が強かったので焦点を絞りやすいのではないか、と考えたこともあり、詳しく調べてみることにしました。

取材ノート

事前調査での発見
“創業120年を生き抜くグンゼのサバイバル経営?”

男性用下着や女性用ストッキングのメーカーとして有名なグンゼ。男性用の肌着ではシェア16%とトップを守り続けている企業ですが、調べてみると、実は肌着以外の分野にも進出しています。
たとえばペットボトルや食品の包装フィルムのほか、タッチパネル用のフィルム、さらには体内で溶ける医療用の糸といった最先端技術に、繊維で培った技術が新たな可能性を生み出しているそうなのです。そして、このような活動は広くは知られていないようでした。
そこで「創業120年を生き抜くグンゼのサバイバル経営に迫るのが面白い!」と考え、企画を練っていきました。図書館やインターネットで探した資料を読み込むのはもちろん、グンゼの社員や経営者、広報担当者へのペン取材(カメラを回さない事前取材)も行いました。辞書よりも分厚い社史を読み、ライバル企業など業界全体のパワーバランスなども頭に叩き込むなど、あらゆる手段を駆使して「伝えるべきポイント」を探っていきます。

そこで集めた素材をもとに、テレビ東京にプレゼンするための企画書を作成します。取材によって得られた情報や調べたことをただ羅列するのではなく、「このような1時間になります」ということを具体的に示した企画書です。
幸い私たちの企画は受け入れられ、番組として制作を進めることになりました。

取材をもとに集められた資料のファイル
取材をもとに集められた資料のファイル。一番組につき数冊に及ぶことも

広報担当への取材から見えてきたもの
“企業姿勢をあらわす「人は財なり」”

グンゼでは、話を聞けば聞くほどストーリーが深みを増していきました。

いまからおよそ120年前、1896年にグンゼは京都の製糸メーカーとして創業しました。1900年代初めに化学繊維のレーヨンが爆発的に普及すると、生糸は壊滅的な打撃を受けます。以来グンゼにとって、時代を生き抜くための試行錯誤と挑戦がスタートします。
生糸の製造会社だったグンゼはやがて肌着メーカーとなり、ストッキングを出荷するのに使っていた包装フィルムを自社で作るようになります。そこで培ったフィルム生成の技術を活かし、需要が高まってきたタッチパネル用のフィルム製造を手がけます。さらには体内で溶ける糸から作る「縫合補強材」という医療品の開発に成功。アメリカの大手医療機器と提携を果たし、溶ける糸を使った再生血管が臨床現場で使われはじめています。
これらはすべて技術の根底がつながっており、やれ飲食に、やれ不動産にといったような儲け主義のもとで事業多角化を進めていく企業が行うビジネス目的の“飛び地”ではなく、培ってきた技術に裏打ちされた“地続き”となっているのです。
事実、グンゼの売り上げ1300億円の内訳を見てみると、肌着類は全体の約半分。残りは肌着とは一見何の関係もない製品が収益源となっています。

中村篤史

もう一つ、取材を通じて見えてきたことがありました。
お話を伺いながら会社の中を歩いていると、歳の離れた同じ名字の方に何人もお会いしました。ひょっとすると、と思ってお話を聞いてみると、予想通り、親子2代・3代でグンゼに勤務しているのです。 みなさん「とてもいい会社だから」と、子どもや孫に入社を勧めるのだそうです。グンゼの企業姿勢は「人は財なり」。これまで取材をしてきた会社とはまた違う、地域に愛される会社、信頼される会社だということを目の当たりにしました。

グンゼ創業者の波多野鶴吉は、グンゼで働く女性たちのために私学を立ち上げ、「これからの世の中に必ず必要になる」と読み書きを教えていたそうです。さらにグンゼの社名は「郡」「是」。地域産業を盛り上げ、地域の見本となるような会社を目指して名付けられたといいます。社会に開かれたパブリックな存在として、地域社会に貢献する組織として成長を遂げていったのです。

中村篤史

キーワード

チャレンジングとコンサバティブ
企業経営にはどちらも欠かせない

これは、取材の中で児玉和社長がおっしゃっていたことで、この言葉にこそグンゼの魂のようなものを感じました。「未知への飽くなき挑戦を」というと聞こえはいいですし、特にものづくりを手がける企業のスタンスとしてはきっと正解なのだと思います。ただ児玉社長が言うように、企業経営の根幹は“攻めと守りの見極め”にあるのでしょう。未来の医療につながる技術が生糸メーカーとして育んできたものの中にあることを知っておくことが大切です。

価値の再定義

児玉社長には「現状への安住は、後退を意味する」という考えがあったそうです。その考え通りグンゼではさまざまなチャレンジをしています。しかし、決して無理なチャレンジはしていない。グンゼが取り組む未来の医療につながる新しい技術開発は、生糸メーカーとして育んできた延長線上にあることを忘れてはいけません。

また、「挨拶をする」「履物をそろえる」「掃除をする」──部署を問わず、グンゼ社内はこの3つが徹底されています。工場を訪れると、行きも帰りも社員たちが立ち上がって見送るなど、とにかく「人」を大切にする文化が根付いていました。人から人へ、たしかな技術が受け継がれていくさまをパーソナリティーの村上龍さんはこう評しています。『縦糸・横糸に紡がれるグンゼは、企業の理想像を表している』

中村篤史

制作実績

カンブリア宮殿バックナンバー 2014年4月17日 放送
「あったかくて最先端! 肌着の王者グンゼ 知られざるサバイバル経営」
https://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/2014/0417/

放送後グンゼの広報室には、社員の方から多くのメッセージが届いたそうです。あらためて自分の会社を客観的に見て「これまで自分たちが気づいていなかった魅力に気づいた」というメッセージだったそうです。
取材をもとに対象の魅力を見つけられたことを実感できて、やりがいを感じた瞬間でした。

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